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名古屋地方裁判所 昭和62年(行ウ)47号 判決 1989年2月20日

主文

原告らの請求をいずれも棄却する

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が、原告らに対し、昭和六一年八月二七日付納付通知書をもってした第二次納税義務の告知処分は、いずれもこれを取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  訴外亀田虎雄の納税保証等

訴外亀田虎雄(以下「虎雄」という。)は、昭和五七年ころ、訴外東海アドバンス株式会社(以下「訴外会社」という。)の納付すべき国税につき、納税保証人になっていたところ、被告は、虎雄に対し、昭和六〇年八月二日付納付通知書をもって、訴外会社の滞納法人税本税金一二三三万二八〇一円、同重加算税金一五〇五万一九〇〇円、以上合計金二七三八万四七〇一円及び右本税に付帯する延滞税を、同年九月二日までに納付するよう求める納付告知処分をした。

2  本件各処分

被告は、虎雄が右納付告知に係る国税を納付しなかったことから、原告らに対し、昭和六一年八月二七日付納付通知書をもって、虎雄の滞納した国税につき、昭和三七年法律第六七号による改正(以下「三七年改正」という。)後の国税徴収法(以下「徴収法」という。)三九条の規定により、各自金五四四万二二〇〇円を限度とし、納付の期限を同年九月二七日とする第二次納税義務の納付告知処分(以下「本件各処分」という。)をした。

3  異議申立て

原告らは、本件各処分につき、被告に対し、それぞれ同年一〇月一四日付書面をもって異議申立てをしたところ、被告は、同六二年一月一三日、原告らの申立てをいずれも棄却する旨決定した。

4  審査請求

原告らは、本件各処分につき、訴外国税不服審判所長に対し、それぞれ審査請求をしたところ、同審判所長は、同年八月二八日、原告らの審査請求をいずれも棄却する旨裁決をし、原告らは、同年九月五日、右各裁決書謄本の送達を受けた。

5  本件各処分の違法

(一) 法令解釈の誤り

被告は、虎雄からその財産の無償譲渡を受けた原告らに対し、徴収法三九条の規定により、虎雄が納税保証した訴外会社の滞納国税につき本件各処分をしたものであるが、同条は、虎雄のような納税保証人からその財産の無償譲渡を受けた者に対しては適用されないものと解すベきであって、本件各処分は、同条その他の法令の解釈適用を誤った違法がある。

(二) 納付の完了

虎雄が、訴外会社の納税保証人として保証した訴外会社の滞納国税は、法人税本税及び重加算税のみであると解されるところ、訴外会社の右各税は、昭和六二年一二月二一日までに完納されているから、虎雄の保証債務は既に完納されており、したがって、原告らに第二次納税義務が発生するいわれはない。

6  よって、原告らは、被告に対し、本件各処分の取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1ないし4の各事実は認める。

2  同5及び6は争う。

三  被告の主張

1  本件各処分に至る経緯

(一) 原告亀田基子(以下「原告基子」という。)は、虎雄の妻であり、原告亀田美葉「以下「原告美葉」という。)、同亀田晋(以下「原告晋」という。)及び同亀田佳生(以下「原告佳生」という。)は、いずれも虎雄と原告基子との間の子である。

(二) 訴外会社は、昭和五三年五月一日に設立され、名古屋市東区葵一丁目二五番一号を本店の所在地とし、純金、プラチナ等の海外商品先物取引の委託の業務を行っていたが、同五八年一月ころから営業不振となり、同六〇年七月事実上倒産した。

(三) 訴外会社は、昭和五五年三月期において、金の取引により約一億円の利益を得たが、翌期分に大幅赤字が見込まれたことから、昭和五五年三月期決算分の利益を翌期に分散計上した疑いが生じ、訴外名古屋東税務署長による税務調査を受けた結果、同五七年九月九日、修正申告書を提出した。

(四) 訴外会社は、昭和五五年三月期の法人税修正申告書による法人税及び附帯税を同五七年九月九日までに納付することができなかったので、国税通則法(以下「通則法」という。)四六条三項により、法人税本税のうち金四三〇〇万円及びこれに対する延滞税、利子税並びに重加算税金一五〇五万一九〇〇円につき、同日から同五八年九月八日までの間の納税の猶予を訴外名古屋東税務署長に申請し、同五七年一一月一九日、同署長から納税猶予の許可を受けた。

(五) 訴外会社は、同年一〇月三〇日から翌五八年八月三一日までの間合計金一一〇〇万円を納付したが、最終分納額金五〇七〇万一六〇〇円を納付しなかったため、被告は、訴外会社から同年一〇月二日付で担保提供されていた宅地持分及び家屋を同五八年一〇月一五日付で差し押さえ、同六二年一〇月六日にこれらを公売処分により売却し、更に、昭和五八年一〇月以降、訴外会社の財産調査、差押え及び納付催告等の手続を進め、同五九年一二月一一日には、訴外会社が有する保証金の返還請求権を差し押さえ、同六〇年三月八日、この差押債権を取り立てたが、なお滞納税金は完納に至らなかった。

(六) 虎雄は、昭和五七年一〇月二日、訴外会社の納付すべき法人税本税、加算税及び延滞税につき納税保証をする旨の納税保証書を提出し、同年一一月九日、右各税について納税保証人となることの許可を受けた。被告は、同六〇年八月二日、訴外会社が納税猶予期間内に右保証に係る租税債務の履行をしなかったので、虎雄に対し、通則法五二条二項により、訴外会社の滞納国税である滞納法人税本税金一二三三万二八〇一円、同重加算税金一五〇五万一九〇〇円、以上合計金二七三八万四七〇一円とこれに付帯する延滞税を同年九月二日までに納付するよう納付通知をしたが、完納されなかったため、再度同月三日付納付通知書で納付督促をしたが、なお完納されなかった。

2  本件各処分

(一) 虎雄の保証に係る訴外会社の法人税本税、重加算税及びこれに付帯する延滞税はいずれも、本件各処分時である昭和六一年八月二七日現在も、未納のままであったが、滞納者である虎雄は、原告らに対し、いずれも滞納国税の法定納期限、すなわち、虎雄に対する納付通知書に記載された納付の期限の日から一年前の日以後である同五九年一一月八日に、自己の唯一の財産である別紙物件目録記載一の土地及び同目録記載二の建物(以下「本件土地建物」という。)の共有持分各八分の一ずつを、同六〇年一月七日に本件土地建物の共有持分各八分の一ずつを、それぞれ贈与(無償譲渡)したため、同六一年八月二七日の時点において、被告が虎雄の残余財産に対し滞納処分を執行しても、なお徴収不足が生じるものと認められた。なお、右贈与により、原告らは、各自金五四四万二二〇〇円の限度において利益を受けた。

(二) そこで、被告は、徴収法三九条の規定により、虎雄を滞納者として、原告らに対し、本件各処分を行ったものであって、本件各処分はいずれも適法である。

四  被告の主張に対する認否

1  被告の主張1の事実について

(一) (一)ないし(五)の各事実は認める。

(二) (六)のうち、虎雄が、訴外会社の納付すべき延滞税について保証する旨の納税保証書を提出したことは否認し、その余の事実は認める。

2  同2の事実について

(一) (一)のうち、虎雄が保証人として保証すべき訴外会社の滞納国税に延滞税が含まれることは否認し、虎雄に対する納付通知書に記載された納付の期限が法定納期限に当たることは争うが、その余の事実は認める。

(二) (二)は争う。

五  原告らの反論

1  本件各処分における徴収法三九条等の解釈の誤り

(一) 納税者の意義について

被告が原告らに本件各処分をなした根拠法令である徴収法三九条は、「滞納者」の国税について徴収不足が生じた場合に適用される規定である。ここでいう「滞納者」とは、徴収法二条九号により「納税者でその納付すべき国税をその納付の期限までに納付しないもの」をいうと定義されているが、右規定にいう「納税者」の意義については、もともと、三七年改正前の旧国税徴収法(以下「旧徴収法」という。)二条六号に括弧書で「(第二次納税義務者及び保証人を含む。)」と規定されていたところ、昭和三七年法律第六六号により国税通則法が制定され(以下「通則法」という。)、その二条五号で、納税者は、「(国税徴収法・・・に規定する第二次納税義務者及び国税の保証人を除く。)」と定義されたことに伴い、三七年改正後の徴収法二条六号においても、旧徴収法にあった「(第二次納税義務者及び保証人を含む。)」との括弧書が削除されたのであって、右改正の経緯に徴すると、徴収法二条六号にいう「納税者」には保証人は含まれないと解すべきである。したがって、徴収法二条九号、三九条の「滞納者」にも保証人が含まれる余地はないのであって、本件において、訴外会社の納税保証人である虎雄から本件土地建物の共有持分の贈与を受けた原告らに対し、徴収法三九条を適用した被告の本件各処分は、いずれも右各法令の解釈適用を誤った違法がある。

(二) 法定納期限について

被告は、納税保証人である虎雄に対する納付通知書に滞納に係る国税を昭和六〇年九月二日までに納付するようにとの記載があったことから、これを法定納期限と解し、この日を基準にして、原告らに徴収法三九条を適用しているが、保証人が納付すべき保証による国税には、納付告知により告知された個別的、具体的な納期限である「納付の期限」は存在するが、徴収法二条一〇号にいう「法定納期限」、すなわち、法律の規定により一般的に定められている当該国税を納付すべき期限は存在せず、このことは、徴収法一五条一項九号において、租税債権と質権との優劣関係を決する基準日として、第二次納税義務又は保証人として納付すべき国税については法定納期限がないことを前提に「納付通知書を発した日」を法定納期限に代わる基準日として定めていることからも明らかである。したがって、法定納期限の存在をその適用要件充足の前提とする徴収法三九条は、法定納期限の存在しない保証人の滞納する国税には適用がないものというべきであり、本件各処分は、同条の解釈適用を誤った違法がある。

(三) 第二次納税義務の趣旨について

徴収法三九条は、形式的には第三者に財産が帰属している場合であっても、実質的には納税者にその財産が帰属していると認めても公平を失しない場合において、形式的な権利の帰属を否認して、私法秩序を乱すことを避けつつ、形式的に権利が帰属している者に対して補充的に納税義務を負担させることにより徴税手続の合理化を図る制度であるから、納税者からの徴税が可能である場合には、同条の適用は許されないものといわなければならない。

ところで、通則法五一条は、所轄税務署長において、保証人の資力の減少により納税者の国税の納付を担保することができないと認めたときには、保証人の変更その他の担保を確保するための必要な命令を発することができることを規定しているのであるから、保証人の納付すべき国税については、徴収法三九条の第二次納税義務の制度を適用することは、法律上予定されていないというべきである。

したがって、虎雄の保証による国税について徴収法三九条を適用してした本件各処分は、同条の趣旨を誤解した違法なものというべきである。

2  虎雄の納税保証の範囲について

被告は、虎雄が提出した納税保証書の記載から、同人の保証に係る訴外会社の滞納国税には、法人税本税、加算税のほか、当然これらに付帯する延滞税も含まれる旨主張するが、右納税保証書には、延滞税については、不動文字で「延滞税 法律による金額」とのみ記載されており、訴外会社に対して発せられた納税猶予許可兼通知書のように「事後計算」なる文字も書き加えられていないのであるから、虎雄においては、訴外会社の延滞税については保証の意思がなかったものと解すべきであり、この場合において、保証債務の納付が完了したことは既に述べたとおりである。

六  原告らの反論に対する認否

1  原告らの反論1(一)ないし(三)は、すべて争う。

2  同2のうち、虎雄の提出した納税保証書の延滞税の欄に不動文字で「法律による金額」とのみ記載されていたことは認め、その余は争う。

七  被告の再反論

1  徴収法三九条等の解釈について

(一) 納税者の意義について

原告らは、虎雄のような納税保証人は、徴収法二条六号の「納税者」に含まれず、したがって、原告らには、同法三九条の規定による第二次納税義務が発生しない旨主張する。しかしながら、納税保証人が徴収法二条六号の定義する「納税者」に該当するか否かは、結局、納税保証人が同号にいう「国税に関する法律の規定により国税を納める義務がある者」に該当するか否かによって決せられるべきものであるところ、納税保証人には、国税に関する法律の規定である通則法五二条一項により、「国税を納める義務」が生じるのであるから、徴収法二条六号の「納税者」に該当することは文理解釈上明白である。なお、旧徴収法二条六号の納税者の定義にあった「(第二次納税義務者及び保証人を含む。)」との括弧書が、三七年改正で削除された理由は、通則法制定前の旧徴収法においては国税全体に関する通則的規定が含まれていたため、保証人が納税者に含まれるか否かについての解釈上の疑義をなくすため括弧書で保証人も納税者に含まれることを明らかにしておかねばならなかったところ、通則法の制定に伴い、かかる通則的規定は通則法の定めるところとなり、徴収法は、専ら滞納処分に関する手続を中心に規定することになったため、旧徴収法のような括弧書を削除しても格別解釈上の疑義は生じなくなったからであり、納税者から保証人等を除く趣旨のものではない。

(二) 法定納期限について

徴収法三九条にいう「法定納期限」とは、同法二条一〇号に規定する「国税に関する法律の規定により納付すべき期限」をいい、保証人の場合には、通則法五二条二項の規定による納付通知書に記載された「納付の期限」が法定納期限であり、本件では昭和六〇年九月二日がこれに当たる。なお、徴収法一五条一項九号は、租税債権と質権との優先関係について、原則として法定納期限と質権設定日の先後によると定めながら、保証人として納付すべき国税については、例外的に、法定納期限によらずに「納付通知書を発した日」と質権設定日の先後によると定めたものであって、むしろ、保証人として納付すべき国税にも法定納期限のあることを前提とした規定である。

(三) 第二次納税義務の趣旨について

第二次納税義務の制度は、納税者が無償又は著しい低額で財産を処分し、その結果国税の徴収を免れるような資産状態を招来させたような場合、すなわち、民法上の詐害行為に該当する行為をしたような場合に、その財産処分による受益者に対して、訴訟手続を経ることなく一定の限度で直接納税義務を負わせて、実質的に詐害行為を取り消したのと同様の効果を得ようとする制度であるから、納税保証人が、かかる詐害行為をなしたことによりその納付すべき国税の徴収を免れるような資産状態を招来させた場合に、その受益者に第二次納税義務を負わせても、何らその制度趣旨に反するものではない。

2  虎雄の保証債務の範囲について

虎雄の納税保証書の延滞税欄に不動文字で「法律による金額」と記載されているのは、保証の範囲内に通則法六〇条に規定する延滞税が加えられることを示しているのであって、これに「事後計算」の文字が書き加えられるか否かによってその法的意味が左右されるものではない。

八  被告の再反論に対する認否

すべて争う。

第三  証拠<省略>

理由

一  課税経過等について

請求原因1ないし4、被告の主張1の(一)ないし(六)(ただし、(六)のうち虎雄が訴外会社の延滞税について納税保証したことを除く。)、同2の(一)ないし(三)(ただし、(一)のうち虎雄が保証人として負担すべき訴外会社の国税に延滞税が含まれることを除く。)の各事実は、いずれも当事者間に争いがなく、これに加えて、<証拠>によれば、以下の事実が認められ、これに反する証拠はない。

1  原告基子は、虎雄の妻であり、同美葉、同晋及び同佳生は、いずれも虎雄と原告基子との間の子である。

2  訴外会社は、昭和五三年五月一日に設立され、名古屋市東区葵一丁目二五番一号を本店所在地とし、純金等の海外商品先物取引の委託の業務を行っていたが、同五八年一月ころから営業不振となり、同六〇年七月事実上倒産した(被告の主張1の(二))ところ、被告の主張1の(一)ないし(五)に記載の経過により、昭和五五年三月期の法人税等を滞納したため、被告は、同1の(五)に記載の公売処分等の措置を採ったが、訴外会社の滞納国税は完納されるに至らなかった。

3  虎雄は、昭和五七年一〇月二日、訴外会社の納付すべき法人税本税、加算税及び延滞税につき納税保証する旨の納税保証書を提出し、同年一一月九日、被告から、右法人税、加算税及び延滞税につき納税保証人となることの許可を受けた(被告の主張1の(六))。

4  被告は、訴外会社の法人税等の未納に伴い、虎雄に対し、同六〇年八月二日、訴外会社の滞納法人税金一二三三万二八〇一円、重加算税金一五〇五万一九〇〇円及びこれに付帯する延滞税を同年九月二日までに納付するよう納付通知をしたが(被告の主張1の(六))、虎雄において、原告らに対し、同五九年一一月八日、本件土地建物の共有持分各八分の一ずつを、同六〇年一月七日に更に本件土地建物の共有持分各八分の一ずつを贈与したことから、虎雄の残余財産に滞納処分を執行しても、同人の保証に係る訴外会社の滞納法人税等を徴収するには不足すると認められた(同2の(一))。

5  虎雄の保証に係る訴外会社の滞納国税の金額は、昭和六一年八月二七日現在、法人税本税金一二三三万二八〇一円、重加算税金一五〇五万一九〇〇円、延滞税金二一三三万七六〇〇円であり、原告らが虎雄からの本件土地建物の共有持分の贈与により受けた利益額は、各自金五四四万二二〇〇円であった。

6  被告は、請求原因2に記載のとおり、原告らに対し本件各処分をなし、原告らは、本件各処分に対し、請求原因3及び4に記載のとおり、異議申立て及び審査請求をしたが、いずれも棄却された。

7  なお、虎雄の保証に係る訴外会社の滞納国税は、昭和六二年一二月二一日現在においても、重加算税金一五〇五万一九〇〇円、延滞税金一五八四万五四九〇円が未納である。

二  徴収法三九条等の解釈について

ところで、原告らは、被告が本件のような保証人から財産の無償譲渡を受けた者に対し徴収法三九条を適用して本件各処分を行ったのは、同条その他の法令の解釈適用を誤ったものである旨主張する(請求原因5の(一)、原告らの反論1)ので、以下この点について判断する。

1  納税者の意義について

まず、徴収法二条六号の「納税者」には保証人は含まれない旨の原告の主張(原告らの反論1の(一))についてであるが、この点については、以下の(一)ないし(四)に記載の理由から、同号にいう「納税者」には、通則法二条五号と異なり、第二次納税義務者及び保証人(以下「保証人等」という。)も含まれるものと解するのが相当である。

(一)  徴収法二条六号は、「納税者」の定義として「国税に関する法律の規定により国税を納める義務がある者」と規定しており、保証人は、国税に関する法律の規定、すなわち、通則法五二条一項により国税を納める義務がある者であるから、文理解釈上、保証人も徴収法二条六号の「納税者」に含まれると解するのが自然である。

(二)  また、徴収法の場合にあっては、滞納処分その他の手続及び国税が他の債権と競合した場合の優先権の関係において、保証人等についても本来の納税者と同様の扱いをすべきことから、同法中の「納税者」に保証人等も含めて規定する必要があるのに対し、通則法の場合にあっては、本来の納税義務の成立、確定及び納付等について規定することを目的とし、保証人等のような補充的納税義務を負う者に対する規定は、本来の納税義務者において滞納が生じた場合を規定する法律、すなわち徴収法の規定するところに任せることにしたため、同法の「納税者」から保証人等を除くことにしたものと解される。

(三)  なお、旧徴収法二条六号の「納税者」の定義にあった保証人等を含む旨の括弧書が三七年改正で削除されたのは、国税債権に関する総則的規定が、新たに制定された通則法によって規定されることになり、徴収法が、旧徴収法のような国税債権に関する総則的規定を含まない、純粋な滞納処分手続法となったことに伴い、特に括弧書で保証人等を含む旨明記しなくても、他の徴収法の規定との関係で、「納税者」に保証人等が含まれるのか否かの疑義が生じなくなったからであると解される。

(四)  また、実質的にみても、右のように解さないと、第二次納税義務者又は納税保証人が、徴収法三九条に該当する責任財産減少行為をなし、これによって第三者が経済的利益を得たにもかかわらず、租税債権の追及を免れる事態が容易に予想し得るところ、かかる事態は、右法条の定める第二次納税義務の目的、すなわち、形式的に第三者に財産が帰属している場合であっても、実質的には納税者にその財産が帰属していると認めても公平を失しないときにおいて、形式的な権利の帰属を否認して私法秩序を乱すことを避けつつ、その形式的に権利が帰属している者に対して補充的に納税義務を負担させることにより徴税手続の合理化を図ろうとした目的と真向から衝突するといわざるを得ない。

以上のとおり、徴収法と通則法の定める「納税者」の意義は互いに異なるものとして解釈するのが相当というべきであり、したがって、徴収法二条六号の納税者には虎雄のような保証人も含まれ、保証人がその保証に係る国税を滞納した場合は同条九号、三九条に規定する「滞納者」に該当すると解するのが相当であるから、この点についての原告らの主張は理由がなく、本件各処分には、徴収法三九条の解釈を誤った違法はない。

2  法定納期限について

次に、保証人については、徴収法一五条一項の規定からしても、そもそも「法定納期限」なるものは存在しない旨の原告の主張(原告らの反論1の(二))についてであるが、この点については、以下の(一)ないし(三)に記載の理由から、虎雄に対する納付通知書に記載された「納付の期限」が、徴収法三九条にいう「法定納期限」と解すべきである。

(一)  徴収法二条一〇号は、法定納期限とは、「国税に関する法律の規定により国税を納付すべき期限」をいうと規定することから、文理解釈上、保証人等については、国税に関する法律である通則法五二条二項に規定する納付通知書に記載された納付の期限をいうものと解するのが相当であり、このように解することは、保証人等の補充的納税義務者については、本来の納税義務者の滞納の態様によってその義務内容が異なってくるため、法定納期限についても、本来の納税義務者のように各税法によって一律に規定すること(例えば、所得税法一八三条一項)が困難であることから考えれば、実質的にみても相当な理由があるというベきである。

(二)  徴収法一五条一項の規定は、質権と租税債権との間の優劣関係を定めるにつき、当該優先権の客観的特定という公示の見地から、質権者が租税債権の存在を知ることができる時、すなわち、租税債権の存在が具体的客観的に明らかになる時を基準にして、その時以前に設定された質権については租税債権に優先すべく、原則として右の基準時を法定納期限として質権と租税債権の優劣関係を定めたものであるが、保証人として納付すべき国税については、法定納期限が保証人に対して発せられた納付通知書の記載の内容によって決せられるため、これを右基準時とすると、右公示の見地からみて適当でないので、このような場合については、例外的に法定納期限をもって右優劣関係を決める基準時とはせず、同条一項九号により、より具体的客観的な基準時として通則法五二条二項の規定により税務署長が納付通知書を発した時を基準時としたものと解すべきであって、同条は、むしろ、保証人の納付すべき国税についても法定納期限の存在することを前提にした規定というべきである。

(三)  したがって、「法定納期限」の解釈についても原告らの主張には理由がなく、本件各処分には徴収法三九条の解釈を誤った違法はない。

3  第二次納税義務の趣旨について

次に、担保を確保するための必要な行為を保証人に対して命じ得ることを定めた通則法五一条等の規定からみて、保証人の納付すべき国税について、徴収法三九条を適用して原告らに第二次納税義務を課するのは、その制度の趣旨から許されない旨の原告主張(原告らの反論1の(三))についてであるが、この点についても、以下の理由から原告らの主張を採用することはできない。

すなわち、通則法五一条は、税務署長が、その裁量において、納税猶予期間中に保証人の変更等の担保変更措置を採ることを認めた規定であって、納税猶予期間の経過後等の滞納処分の執行の段階において保証人の残余財産に滞納処分を執行しても徴収不足が生じると認められた場合の措置を定めた徴収法三九条と矛盾ないし重複するものではない上に、通則法五一条の措置があるからいって保証人による詐害的な責任財産減少行為に十分対処できる保証はないから、実質的にも徴収法三九条を適用する必要性は残るというべきであり、したがって、原告らの主張は到底採用することができない。以上のとおり、本件各処分は徴収法三九条の解釈を誤った点はなく、適法な処分と認めるのが相当である。

三  虎雄の納税保証の範囲について

なお、虎雄には納税保証書(乙第四号証)の記載から訴外会社の延滞税まで保証する意思はなく、昭和六二年一二月二一日時点においては、虎雄の保証に係る訴外会社の滞納国税は完納されている旨の原告の主張(請求原因5の(二)、原告の反論2)についてであるが、右納税保証書の記載からみると、虎雄において訴外会社の法人税本税、重加算税のほかに法律の規定によって算出される延滞税額についても保証する趣旨のものであると解するのが相当であり(このように解しても、延滞税額は、国税通則法第六章第一節の規定によって容易に算出、確定することができるから、虎雄に対して予想外の不利益を与えることはないと考えられる。)、また、本件処分の時である昭和六一年八月二七日の時点においてはもとより、同六二年一二月二一日現在においても、虎雄の保証に係る訴外会社の滞納国税の存することは前記一の7で認定したとおりであるから、原告らの主張には理由がない。

四  結論

以上の次第で、原告の本訴各請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行訴法七条、民訴法八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 浦野雄幸 裁判官 加藤幸雄 裁判官 岩倉広修)

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